次世代のたんぱく源確保のため、政府も食品業界も昆虫食の開発に力を入れています。コオロギパウダーが開発され、次々に商品が開発されています。しかし、消費者側からは敬遠されているのが現状です。なぜ、コオロギ食品は嫌われるのでしょうか?そこで、コオロギは食べても安全なのか調べました。
コオロギは、アレルギー反応や食中毒の懸念があるほか、人間の腸では消化できない「キチン」を含むため、健康を害するリスクがある、また微毒性があり漢方では不妊薬であり、特に妊婦の方は注意が必要 ということがわかりました。
目次
なぜコオロギ食品を開発するのか
では、コオロギを食品にするメリットは何なのでしょうか?
メリット
- 牛や豚に比べて環境への影響が少ない
- たんぱく質が豊富で栄養価も高い
- コオロギは昆虫の中でも繁殖力が高い
コオロギは、次世代たんぱく質源として、短期間で多くの固体を生み出すことができるため、将来的に実用的で持続可能な食糧源になる可能性があると期待されています。しかしながら、このメリットにも矛盾があるようです。
矛盾点
- コオロギの養殖適正温度は25℃~30℃
- 蒸れに弱い
- きれいな水が必要
- 寄生虫を持ちやすい
- コオロギは雑食、たんぱく質も必要
コオロギを生息させるために温度管理、清潔な水、乾燥した空気を保つ環境が必要です。そのためには、環境を管理するための装置が不可欠となり、もちろんエネルギーが必要になります。寄生虫問題もあるため、衛生管理にも神経を使います。
また雑食のため飼料も必要です。コオロギはたんぱく質を摂取します。そのため、コオロギのためのたんぱく質が必要になります。
人間のたんぱく源を確保するためのコオロギにたんぱく質を与える?? 不思議な話です。
安全性は…
食用コオロギの安全性は確立しているのか気になります。政府は推奨していますが、安全性が立証されたと明言しているのでしょうか。
内閣府食品安全員会が懸念を公表
欧州食品安全機関(EFSA)、新食品としてのヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)についてリスクプロファイルを公表しました。その日本語訳が内閣府の食品安全委員会のホームページに掲載されています。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05010960149
(1)総計して、好気性細菌数が高い。
(2)加熱処理後も芽胞形成菌の生存が確認される。
(3)昆虫及び昆虫由来製品のアレルギー源性の問題がある。
(4)重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題がある。
寄生虫、カビ類、ウイルス、プリオン、抗菌剤耐性及び毒物類の他のリスクは低いと判定された。数種のリスクに関しては、更なるエビデンスが必要であることを強調しておく。
つまり、
コオロギには菌が大量に付着しており、加熱しても食中毒を発症する可能性がある。さらに、キチンなどの成分でアレルギーを発症したり、神経疾患を引き起こす重金属が体内に蓄積していく恐れがあるということが記載されています。
安全性が確認されたとは言い難いようです。
アレルギー反応
欧州食品安全機関(EFSA)の資料にも、コオロギはアレルギーを引き起こす要因になる可能性が高いことが明記されています。
甲殻アレルギーの方は特に注意!
コオロギには、たんぱく質のほかキチン質が含まれます。
キチン質というのは、カニやエビ、カタツムリなどの外骨格や甲殻類の殻、昆虫の羽や鱗などに含まれる化合物です。そのため、甲殻アレルギーの方は特に注意が必要です。 また、キチンは食物繊維ですが、人間の腸では消化する酵素がないため、腸内細菌に悪影響を及ぼす可能性もあります。
「大量に食べなければ大丈夫」という方もいますが、大量の基準が明確ではありません。フィナンシェ1個につきコオロギの配合量10匹分や30匹分の商品が販売されています。10匹は大量なのか少量なのか、判断基準があいまいです。
アレルゲンの表示義務はない
甲殻アレルギーの方は特に注意が必要と言っているにも関わらず、コオロギを原料に使ってもアレルギー表示の義務はありません。アレルギー表示に関しては、こちらの記事をご覧ください。
浜田議員による国会質疑
2022年臨時国会でNHK党の浜田聡議員が昆虫食とエビ・カニに対するアレルギーの注意喚起の必要性に関する質問をしました。浜田議員の国会答弁の一部を抜粋します。
臨時国会の質疑で、現段階ではアレルギー表示義務はないと明確に回答しています。また、学校給食においても、各学校の対応に任せるという、無責任と言われても仕方のない答弁です。
食品表示義務
アレルギー源の表示義務はありませんが、食品表示義務はあります。コオロギを食材で使用した場合は食品表示欄に記載されます。商品の裏側に記載されている場合が多いです。
表示名
- ドライクリケット
- 食用コオロギ
- 食用乾燥コオロギ
- 食用コオロギ粉末
- 食用コオロギパウダー
- 乾燥コオロギ
- コオロギ粉末
- コオロギパウダー など
「ドライクリケット」と表記している商品もあります。
日本の伝統食にコオロギはない
日本には「イナゴの佃煮」などの郷土料理があります。戦時中は、イナゴなどを食べて食糧不足を補っていた時代もあります。海外からも日本人は虫を食べるのに抵抗がない民族と思われがちです。
しかしコオロギを食べる習慣はありません。
イナゴとコオロギの違い
なぜイナゴは食べて、コオロギは食べなかったのでしょうか?
イナゴ
長野県伊那谷や群馬県など海産物が少ない山間地では稲を食べる害虫とされると同時に水田から得られる重要なタンパク源として食用にもされた。 イナゴは、昔から内陸部の稲作民族に不足がちになるタンパク質・カルシウムの補給源として利用された。
ウキペディアより
コオロギ
完全な草食や肉食もいるが、ほとんどが雑食で、植物質の他にも小動物の死骸などを食べる。小さな昆虫を捕食するほか、動物性の餌が長らく手に入らなかったり、脱皮中で動けなかったりしていて同種個体と遭遇した場合、共食いをすることもある。
ウキペディアより
違いを見ると、「稲を食べているイナゴは安全だが、腐植を食べているコオロギは危険だ」と、イナゴは佃煮にして食したが、コオロギは食用にしなかったという先人たちの知恵がうかがえます。
また、コオロギは微毒があり漢方では不妊薬です。妊娠中の女性が食べた場合、流産や早産を引き起こす恐れがあることも明らかになっています。
教育現場で推奨される昆虫食
安全性も懸念され、食品表示の法整備への取り組みもしないまま、研究開発や商品化、また学校教育や学校給食に昆虫食を提供することは加速度的に進んでいます。
教育現場で提供される昆虫食
学校給食
〇2022年11月、徳島県立小松島西高校で国内で初めて食用コオロギを使用した給食を提供。
調理実習
〇都立葛飾ろう学校では今月、高等部専攻科食物系の調理実習で初めて昆虫食を扱った。
引用元:日本農業新聞 2023年2月11日
〇“昆虫食”学ぶ小学生 コオロギパウダーでパンケーキ作り
引用元:NHKニュース 2023年2月16日
子供向けテーマパークも提供
〇【キッザニア】でコオロギ入りポップコーン作り!食品ロスやSDGsを親子で考えるきっかけに
引用元:小学館 2022-07-31
〇【日本科学未来館】未来を救う昆虫食を子どもと実食!
引用元:るるぶキッズ 2021-1-21
次々に開発される加工食品
コオロギをはじめとする昆虫食は加速度的に開発され、商品化し流通しています。店舗でもネットでも色々な商品が販売され、飛行機の機内食でも提供されています。
「コオロギパウダー」「コオロギせんべい」「クロワッサン」「バウムクーヘン」「フィナンシェ」「インスタント麺」「カップ麺」「チョコレート」などなど、ネットで検索すると次々に出てきます。
昆虫食1000億円市場へ
コオロギに熱い視線 環境配慮の次世代たんぱく源 昆虫食、1000億円市場へ
牛や豚に比べ低い環境負荷で生産できる次世代のたんぱく源として、コオロギに注目が集まっている。3年後には昆虫食の市場規模が世界で約1000億円に達するとの試算もあり、参入企業が増加。コオロギを使用した商品の多様化も進んでいる。(時事通信経済部 河合剛希)
時事ドットコムニュース 2023年02月22日
消費者の反応は…
次々に提供される昆虫食に対して消費者、つまり食する方の反応はどうなのでしょうか。喜んで受け入れている人ばかりではありません。
学校にクレーム
給食や調理実習を通じて、コオロギを試食したことに関してクレームが殺到しました。
「子供に食べさせるな」コオロギ粉末給食に苦情殺到
徳島県小松島市内の県立小松島西高校・食物科が、コオロギパウダーを使った給食を試食で出したところ、「子供に食べさせるな」といったクレームが相次いでいる。
J-CASTニュース 2023年2月28日
88.7%の人が昆虫食は避けると回答
20代から60代の男女1035人を対象にホットペッパーグルメ外食総研が行ったアンケート調査で、もっとも嫌われていたのが昆虫食でした。88.7パーセントの人が「避ける」と答え、さらにそのうち62.4パーセントの人が「絶対に避ける」と言っています。つまり、昆虫はどうしても「無理」ということです。
Forbes JAPAN 2023-01-28
6割以上の人が「絶対に食べない」とアンケートに答えています。消費者が食べたくないものを開発しても、受け入れられるのは難しいようです。
なぜ研究開発するのか
これほどまでに消費者に敬遠される昆虫食をなぜ研究開発するのか?という疑問が出てきます。
内閣府がすすめる政策
内閣府は2018年から「ムーンショット型研究開発」に取り組んでいます。ムーンショット型研究開発には9つの目標があります。
ムーンショット型研究開発とは
ムーンショット型研究開発制度は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する国の大型研究プログラムです。
内閣府ホームページより
ムーンショット目標5「2050年の食と農」
「目標5 食と農」の取り組みの中に、「2050年までに、微生物や昆虫等の生物機能をフル活用し、完全資源循環型の食料生産システムを開発する。」とうたわれています。
昆虫食は内閣府が推し進める研究開発であることがわかります。
詳細は内閣府のホームページへ
手厚い補助金制度
日本には「認定農業者制度」があります。この制度で「コオロギ養殖は畜産農業」に当てはまります。「農業経営改善計画」の認定を各市町村より受ければ認定農業者になります。認定農業者は補助金等の支援があります。
また、認定農業者になれば補助金だけではなく、「農業経営基盤強化準備金制度」や「低金利融資」など手厚い支援を受けることができます。
ゴキブリやハエも食用へ
研究開発はコオロギだけではありません。繁殖率の高いゴキブリやハエの研究も進んでいます。実際に、ハエの幼虫ウジ虫は商品として販売されています。
ハエの幼虫は意外と美味!? コオロギに勝る強みとは
イエバエの幼虫(マゴット)を養殖するベンチャーのフライハイ(東京都渋谷区)は昨年、食用の「乾燥マゴット」を発売した。うじ虫というと汚いイメージがあるが、フライハイのマゴットは、豆腐屋から出たおからを食べて育った清潔な「箱入り虫」である。
週刊朝日 2023-01-20
おからを食べて育ったうじ虫…であれば、うじ虫を食べるより、おからを食べたいです!
昆虫、ゲノム編集で食欲そそる 「未来の宇宙食」狙う
新たなたんぱく源と期待される食用コオロギの普及を狙う研究が進んでいる。徳島大学はゲノム編集でコオロギを白くし、粉末状の食材として使いやすくする。東京農工大学は植物残さを利用した循環型のコオロギ育成法の確立を目指す。見た目を変えたり環境負荷を減らしたりすることで広く受け入れやすくする狙いだ。2050年には宇宙空間で生産する構想もある。
日経経済新聞 2022-12-12
政府が昆虫食を推進しているため、研究開発はどんどん進んでいます。食糧不足に備えてということですが、一方でこんな声もあります。
疑問の声
搾りたての「牛乳」を、なぜ廃棄しなければいけないのか
北海道の酪農家では、生乳の廃棄処分をせざるを得ない事態が起きている。生乳の生産量を減らすよう農協から求められ、900頭あまりの乳牛を抱える牧場だと1日 1~2トンの生乳の廃棄を始めているそうだ。…続き⇒こちら
ITmedia ビジネス 2023-2-24
年70万トン!廃棄物扱い「おから」の悩ましい実態
日本ではある”食品”が年70万トン、「廃棄物」として扱われている。いったい何のことかわかるだろうか。
東洋経済 2022-09-30
その正体は、「おから」。おからとは、言わずと知れた、豆腐を作る時にできる豆乳を搾った「搾りかす」のこと。
その量たるや、使用した大豆(乾燥)の1.35倍にもなるという。これが年間で70万トン。…続き⇒こちら
牛乳もおからも、どちらも優良なたんぱく質です。コオロギパンを食べるより、牛乳パンを食べたいというのが多くの消費者の声です。
「害獣」を「ジビエ」に
農場を荒らす害獣として駆除される野生鳥獣は年間約120万頭。そのうち9割以上が廃棄されています。この現状に対して「駆除した動物に敬意を払い、100%有効活用すること」を目指し、2019年に「猟師工房ランド」はオープンしました。
ニッポン全国フードシフト中
まとめ
私は、先人が築いてきた「美味しい食」を、次の世代にも残していきたいと思います。
食糧不足に備えて養殖しやすい昆虫に目をつけたようですが、昆虫を食用化する前にできることがまだまだあると多くの人は考えています。
廃棄される食材は牛乳やおからだけではありません。
米ぬかや規格外の野菜や果物なども多く捨てられています。
また、害獣と呼ばれるイノシシやシカなども、捕獲した9割が廃棄処分されています。イノシシやシカは、ジビエ料理にも代表される優良な食肉で高価なたんぱく源です。
この廃棄されている物を活用する研究開発が先決だという声が上がっています。
古来より日本人は大豆や玄米を始めとする植物や魚から優良なたんぱく質を摂取して生きてきました。今こそ先人たちの生活の知恵を大いに学ぶべきだと考えます。
多くの人が望んでいない昆虫食は避けたいものです。ましてや、今の子供たち、次の世代の人達が「昆虫を食べなくては生きていけない世界」になって欲しくないと切に願います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。